2025.03.31
運送業界
【高速道路の深夜割引】2025年7月から従来の制度が廃止に!変更・見直しの内容を解説

近年、交通インフラの見直しが進む中、高速道路の深夜割引の廃止が議論されてきました。深夜帯の利用促進を目的に導入されたこの割引ですが、交通量の変化や財政負担の増大を背景に、見直しが決定されて新制度へと移行します。
今回の記事では、高速道路の深夜割引の廃止や見直しがいつからなのか、廃止に至る背景や新制度の内容について解説していきます。
目次
高速道路の深夜割引とは?
こちらでは、高速道路の深夜割引の設立と狙い、現行制度が変更される理由について解説していきます。
高速道路の深夜割引の設立と狙い
高速道路の深夜割引とは、道路公団の民営化を目前にした2004年度に導入されました。
もともとは一般道の沿道環境を改善するため、交通容量に余裕のある高速道路の夜間利用を促進するのが狙いです。
高速道路の深夜割引が変更される理由
導入から21年が経つ深夜割引ですが、現在は、深夜0時~4時の間を通行するETC車が割引対象となっています。
そのため現在の制度では、深夜割引適用待ちの車両の滞留がみられること。また、荷主に対して立場の弱い運送事業者等は割引が適用される深夜に走行せざるを得ないとの意見もあり、深夜割引がトラック運転者等の労働環境の悪化に繋がっているとも捉えられていました。
また、割引が特定の業種や時間帯に偏っていることで、他のドライバーとの公平性に欠けるとの指摘があります。
そのため、新しい深夜割引では次の狙いがあります。
- ●適用の時間帯を拡大して、出入口手前で待機する車両を緩和する
- ●適用時間の拡大で、料金体系の公平性や透明性を見直す
現在の深夜割引は2025年7月から変更予定
現在の深夜割引は2025年7月頃を目途に廃止され、新しい制度へと移行します。当初は、2025年3月頃を目途に制度が変更される予定でした。
新制度の時期が延期されたのは、システム整備に想定以上の時間がかかっているのが理由です。
高速道路の深夜割引見直し時期の延期について ※一部抜粋 高速道路の深夜割引見直しについて、2024年度末ごろに運用を開始する予定であることをお知らせしておりました。 しかし、割引適用時間帯に走行した分の料金を対象として割り引くために必要となるシステム整備に時間を要しています。 そのため、当初の見込みより遅れが生じていることから、2024年度末ごろからの運用開始が困難となりましたのでお知らせいたします。 引き続き、システム整備に取り組んでまいりますが、本格運用の開始時期については、2025年7月ごろに延期させていただきます。 引用:高速道路の深夜割引見直し時期の延期について | ニュースリリース | プレスルーム | 企業情報 |
従来の深夜割引の内容
従来の深夜割引の内容は、次の表を参考にしてください。
条件 | ・ETC車載器を取り付けている車両 ・ETCが整備されている入口インターチェンジをETC無線通信により走行 |
時間 | 深夜0時~4時 ※0時〜4時に対象の高速道路を走行していれば、高速道路に入ったり出たりする時間は何時でも大丈夫 |
道路 | NEXCO3社 (NEXCO東日本・中日本・西日本) が管理する、全国の高速道路及び宮城県道路公社の仙台松島道路 ※京葉道路・第三京浜道路・横浜新道・横浜横須賀道路は割引の対象外 |
割引 | 入口から出口までの全走行の高速料金に対して30%割引 |
【2025年7月以降】深夜割引の新しい仕組み
2025年7月からの深夜割引は、次の項目が変更されます。
- ●時間帯の拡大、走行した時間帯のみ対象
- ●割引計算方法
- ●上限距離の設定
- ●割引適用方法の変更
- ●長距離逓減(ていげん)制の拡充
時間帯の拡大、走行した時間帯のみ対象
従来の深夜割引は、深夜0時〜4時までが対象時間で、新しい深夜割引は、22時〜翌5時へ拡大します。
従来では、深夜0時~4時の間に少しでも高速道を走行していれば全走行分の高速料金に対して30%の割引が適用されましたが、今回の改定により走行した時間帯のみ割引が適用されます。
「21時に高速道路に入り、翌2時に高速道路を出た。」という例を対象とすると、次のような違いがあります。
従来制度:21時~翌2時までに走行した料金が割引の対象
新制度:22時~翌2時までに走行した料金が割引の対象(21時~22時からは対象外)
従来の制度は、0時〜4時に対象の高速道路を走行していれば、高速道路に入ったり出たりする時間は何時でも大丈夫でした。
新制度では時間帯が拡大する分、対象外の時間帯は割引の対象にはなりません。
割引計算方法
従来の制度では、料金所を通過する時間で割引が計算されていました。新制度ではこれに加えて、ETC無線通信専用アンテナを活用し、走行距離に基づいて割引額が算出されます。
これにより、深夜割引の適用時間帯に料金所を通過していなくても、その時間帯に走行した実際の距離に応じて割引が適用されます。
また、従来の平日朝夕割引と同じく、割引制度が後日還元型へと変更されます。これは、車両ごとの通信データの処理に時間がかかるためです。
上限距離
新しい制度では、割引適用時間帯の走行距離を増やすことを目的とした「速度超過」などの無謀な運転を抑止するために、割引適用距離に上限が設定されます。
【大型車、特大車(乗合型自動車以外)】
上限距離 | 利用時間1時間あたり90km |
詳細 | 割引適用時間帯において利用時間が4時間を超える場合、上記の計算から利用時間30分に相当する上限距離を減じる。 ただし、減じた後の上限距離は利用時間4時間に相当する上限距離(360km)を下回らないものとする。 |
上限距離 | 利用時間1時間あたり105km |
詳細 | 割引適用時間帯において利用時間が4時間を超える場合、上記の計算から利用時間30分に相当する上限距離を減じる。 ただし、減じた後の上限距離は利用時間4時間に相当する上限距離(420km)を下回らないものとする。 |
上記の上限距離設定は、速度超過等の無謀な運転を容認するものではないので注意してください。
【深夜割引見直し後の上限距離の設定(無謀な運転の抑止策)】
・深夜割引の割引適用時間帯の走行距離を増大させることを目的とした「速度超過」などの無謀な運転を抑止し、引き続き安全・安心に高速道路をご利用いただくために、割引適用時間帯の走行距離に上限を設定します。 ・深夜割引の割引適用時間帯の走行距離が上限距離を超える場合は、上限距離を用いて、深夜割引の割引後料金を計算します。(上限距離以下の場合は、割引適用時間帯の走行距離に応じて計算します。) ・なお、上限距離は、厚生労働省が定める「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」における連続運転時間の考え方等を参考に、利用時間が4時間を超える場合は30分の休憩を考慮して設定します。 引用:高速道路の深夜割引の見直しについて|NEXCO東日本 |
割引適用方法の変更
「割引計算方法」でも触れましたが、新しいシステムでは割引制度が、ETCマイレージサービスやETCコーポレートカードを利用した、後日還元型に変更となります。
そのため深夜割引の適用を受けるには、ETCマイレージサービスやETCコーポレートカードへの事前登録が必要です。
長距離逓減(ていげん)制の拡充
深夜割引の見直しにより、400㎞超の走行を対象に「長距離逓減(ていげん)制」を拡充します。
長距離逓減制とは、 NEXCO3社が管理する高速道路のうち対距離料金を適用する高速自動車国道の利用にあたり、利用距離に応じて通行料金を次第に減らす制度です。
これは長距離運転による、通行料金の負担増を軽減するのが狙いです。つまり一度に400km以上走行する車両は、高速道路の料金が段階的に自動で安くなります。
ちなみに対距離料金を適用しない高速自動車国道、一般有料道路、他の高速道路会社が管理する高速道路は対象外であり、長距離逓減の対象距離には含まれません。
まとめ
従来の深夜割引は、2025年7月を目途に新しいシステムへと移行されます。時間帯や割引制度など、いくつか変更点があります。
深夜に高速道路を運転する機会の多い職業ドライバーの方は、今回紹介した新しい制度について詳しく把握しておきましょう。