2022.03.12

危機管理

安全運転を管理する「運行管理者」とは 制度や役割について解説

目次

自動車を利用して旅客や貨物を運送する自動車運送事業には、運転者を管理するための「運行管理者」が存在します。
あまり知られていない運行管理者という存在ですが、具体的にどのような業務をこなす立場なのでしょうか。

以下に、運行管理者の具体的な実態を解説します。

運行管理者とは

自動車運送事業者は運送事業を行う上で営業所を有しており、旅客や貨物を運送するための自動車を所有し、運転者を雇用しています。自動車運送事業業務を円滑にこなすためには、営業所が有する車両や労働者(主に運転者)を取り仕切らなければなりません。これらの役割をこなす者を、運行管理者と呼びます。

 

自動車運送事業者は、運行管理制度に基づき運行管理者を選任します。運送事業を行う現場には、然るべき人数の運行管理者が求められます。

運行管理者の業務

運行管理者は、道路運送法及び貨物自動車運送事業法に従い、安全確保を第一目的とした自動車運行業務を行います。

主な業務内容
 

 
  • ・運転者の業務時間や予定の管理(乗務割や乗務記録の作成、勤怠の設定や運転者の配置、運行経路の選定など業務体制の管理全般)
  • ・点呼による運転者の健康状態の把握と管理(乗務前及び乗務後の点呼実施、運転者の乗務の可否決定、健康状態の管理など)
  • ・運転者に対する指導及び監督(運転者に対する業務の指導、法令遵守の徹底など)

運行管理者の選任の条件

運行管理者の選任には、運行管理制度により規定された必須条件を満たす必要があります。

国家資格者

運行管理者には、運行管理者資格者証が必要です。資格を取得するためには、一定の条件を満たさなければなりません。(後述)資格を有する者以外を、運行管理者として選任することはできません。

営業所によって定められた人員数の選任

必要な運行管理者の人数は、営業所の規模により異なります。

 

運行管理者配置基準

旅客(バス・タクシー)

貨物(トラック)

【貸切】

保有車両39車両まで:2名

39車両を上回る場合:20車両につき1名追加

100車両以降:30車両ごとに1名追加

 

【乗合・乗用】

保有車両39車両まで:1名

以降:40車両ごとに1名追加

保有車両が29車両まで:1名

以降:30車両ごとに1名追加

選任届の提出

運行管理者を選任した際には届出が必要です。旅客事業者は15日以内、貨物事業者は一週間以内に、管轄する運輸支局整備課に届出書を提出します。

運行管理者になるには

①運行管理者の国家試験に合格する

資格取得に際しては、運行管理者試験(CBT試験)を受験する必要があります。道路運送法や貨物自動車運送事業法など、業務を行う上で必要な知識や能力が問われます。

 

試験は毎年2回行われ、全国に設置された試験会場で受験することが可能です。例年の試験合格率は30%前後であり、試験に向けた対策は必要不可欠でしょう。

受験資格

受験には、以下の資格を有している必要があります。
 

  • 自動車運送事業の運行管理に関する実務経験を1年以上有する者
  • 国土交通省が認定する基礎講習を修了している者 

〈参考〉

公益財団法人 運行管理者試験センター

②一定の実務経験及び特定の要件を満たす

運行管理者資格証の種類に応じ、現場実務を5年以上こなす必要があります。

 

また、5年の実務経験と並行し、決められた講習を5回以上受講(自動車事故対策機構が行う基礎講習を最低でも1回)することが求められます。

 

〈参考〉

国土交通省 自動車運送事業の運行管理者になるには

運行管理者の義務や権利に関して

運行管理者資格証を取得し、運行管理者として業務をこなす際には、以下の点に注意が必要です。

定期的な講習受講義務

自動車運送事業者は、雇用している運行管理者に対し所定の講習を受講させます。
講習は2年に1度行われる基礎講習と、一般講習及び事故を起こした運行管理者に向けた特別講習が存在します。

 

  • 基礎講習(法律や業務に関する基礎知識の取得を目的とした講習)
  • 一般講習(法律や業務に関する一般知識の取得を目的とした講習)
  • 特別講習(事故や違反に関する知識の取得を目的とした講習)

補助者を選任してもらえる

自動車運送事業者は、運行管理者が不在時(休日など)に業務を代行する補助者を選任することができます。運行管理者資格者や、国土交通大臣が認定した講習を修了している者が補助者としての資格を有します。

運転者として業務を行う場合

運行管理者自身が、運転者をこなすことも可能です。しかし、点呼を自分自身で行うことは認められていません。運転者と兼任する際には、他の運行管理者や補助者がいなければなりません。

 

〈参考〉

国土交通省 自動車総合安全情報 運行管理者について

法令違反や罰則に関して

運行管理者は、上述の法令に従わなければなりません。法令違反は様々ですが、代表的なものには以下のような事例が存在します。

運行管理者の不在や未選任

前任の運行管理者が退職及び休職し、後任の有資格者がいない場合、一時的に運行管理者がいなくなってしまうことがあります。

また、運行管理者の選任を行わないまま、営業所の運営を継続していた事例も存在します。すぐに後任を見つけられないことが、大きな原因の一つです。

講習の未受講

たとえ運行管理者資格証を所持していても、定期的な講習受講義務を疎かにしている事例もあります。受講を怠った場合には、行政処分の対象となります。

国土交通省は、定期的に運送事業者に対して監査を実施しています。運行管理者を選任していない、選任漏れ、講習の未受講、虚偽の報告等は違法です。

 

法令違反には「文書警告」「車両の使用停止」「事業停止」「許可取消」などの、行政処分が課せられ、違反は累積点数制度によって管理されています。運行管理者の法令違反も処分の対象であり、実際に処分が下された営業所も存在します。

 

〈参考〉

国土交通省 自動車総合安全情報 行政処分の基準

まとめ

自動車運送事業にとって、運行管理者の存在は重要です。慢性的な人材不足が叫ばれている自動車運送業界において、業務の根幹を成す運行管理者の重要性は明らかです。自動車運送事業者は、運行管理者に関する法律や制度を遵守し、規則に基づいて選任することが求められます。

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