2022.05.19

危機管理

安全運転管理者を選任しないとどうなる? 義務や罰則について

目次

事業内容の都合上、自動車を使用しなければならない事例は多いでしょう。
人や物の運搬や従業員の送迎など、業務に自動車を使用する場合には、運転を管理する者(安全運転管理者)を選任する必要があります。

安全運転管理者制度とは

道路交通法によって定められた安全運転管理者の選定は、事業者の義務です。安全運転管理者制度とは、事業業務において規定数を超えて自動車を使用する場合、運転の安全性と運行に必要な指導や管理を行うために適任者を選抜し、事業者と管理者の責任を明確にした上で、安全な運転環境を確保することを目的として定められた制度です。

安全運転管理者の選任基準

安全運転管理者(1名の選任)

  • 事業用以外の自動車5台以上(自動二輪車は0.5台扱い)

  • 定員11人以上の事業用以外の自動車の場合は1台以上

 

副安全運転管理者

  • 事業用以外の自動車20台〜39台(1名以上の選任)

  • 事業用以外の自動車40台〜59台(2名以上の選任)

  • 20台を超えた場合のみ20台ごとに1名以上を追加選任

 

安全運転管理者は、自動車を使用する本拠地の数に応じた人数が必要になります。事業の特性上、自動車使用の拠点が複数存在する場合には、拠点ごとに基準に沿った選任が義務付けられています。

安全運転管理者に欠くことのできない項目

安全運転管理者

  • 20歳以上(副安全運転管理者が必要な場合には30歳以上)

  • 現場における運転管理経験が2年以上である者

  • 公安委員会による教習を修了及び実務経験1年以上である者

  • 上記の条件に当てはまらない場合でも、公安委員会が認めた者(課長職相当であることが望ましい)

 

副安全運転管理者

  • 20歳以上

  • 現場における運転管理経験が1年以上、または運転経験が3年以上の者

  • 上記の条件に当てはまらない場合でも、公安委員会が認めた者

 

その他の要件

  • 最近2年以内に公安委員会により同職等の解任命令を受けていない者

  • 最近2年以内に違反行為(ひき逃げ・飲酒運転・無免許運転など)をしていない者

安全運転管理者と運行管理者の違い

安全運転管理者と運行管理者の違い

安全運転管理者と類似する資格に、運行管理者があります。どちらも運転の安全性や運転者の管理に従事する資格ですが、厳密な違いが存在します。

 
  • 安全運転管理者:白ナンバー(自家用自動車)の運行管理を行う

  • 運行管理者:緑ナンバー(貨物自動車運送業で使用する自動車)の運行管理を業務とし、国家資格が必要な役割。

 

それぞれ異なるナンバー車両を管理する両管理者には、対象車両以外にも資格要件など細かい差異が存在します。

 

〈参考〉長野県警察 安全運転管理者制度について

 

安全運転管理者を選任しなかった際の罰則

安全運転管理者の選任義務があるにも関わらず、選任を怠っている事業所には罰則が発生します。安全運転管理者及び、副安全運転管理者の選任義務(共に道路交通法74条に記載)に違反した場合、5万円以下の罰金(法人等両罰)が罰則として課せられます。

 

選任基準を満たしている事業所は、資格要件を満たす者の中から適任者を選びます。要件に基づき管理者が決定した際には、選任してから15日以内に然るべき公安委員会に届出を提出しなければなりません。


〈参考〉長野県警察 安全運転管理者制度について

安全運転管理者の義務を怠った場合の罰則はないが・・・

現在の道路交通法には、安全運転管理者の選任や解任について罰則が設けられています。しかし、予め定められた具体的な業務や責務に関して、それを怠った場合の法的罰則は規定されていません。

 

安全運転管理者に求められる業務(道路交通法施行規則より抜粋)

 
  • ①運転者の現状把握「運転者の業務適正や技能、知識、道路交通法の遵守状況を把握するための措置を講じる業務」

  • ②安全な運行計画の作成「道路交通法や労働基準法など、運転の安全性を確保するための要件に注意し、運行計画を作成する業務」

  • ③距離や状況に応じた的確な交代要員配置「距離の長い運転や夜の運転に対する、交代要員の準備等の措置を講じる業務」

  • ④気象に応じた安全確保「異常気象や天災などによって安全運転に支障が生じる場合、運転者の安全性を確保するための指示や対応の措置業務」

  • ⑤点呼等による安全運転の指示「運転前の点呼や運転の有無の確認と判断、必要な指示業務」

  • ⑥運転日誌の記録と管理「運転業務に必要な事項を記録する日誌の管理と記録業務」

  • ⑦運転者に対する指導「法律に基づいた安全運転の教育、指導業務」

 

道路交通法規則の一部改正により追加された業務

 
  • ⑧酒気帯び有無の確認及び記録の保存(令和4年4月から)「運転前と運転後の運転者に対し、見ることによる酒気帯びの確認行為及び、記録の保存業務」

  • ⑨アルコール検知器の使用義務(令和4年10月から)「酒気帯びの有無の確認を、予め指定されたアルコール検知器を用いて行うこと及び、検知器の有効保有を維持する業務」

上述した個別の業務について、罰則規定はありません。しかし、道路交通法には安全運転管理者が要件に添わない場合や、義務の不履行が原因となり安全運転が確保されていないと認める場合において、公安委員会が解任を命じることができる旨が記載されています。

 

個別の業務を対象とした罰則は制定されていませんが、全体的な業務怠慢が認められる場合には、責任を追わなければならない可能性があるのです。さらに、安全運転管理者が業務を怠っていたことにより重大な事故や過失が発生した場合には、より厳格な制裁が課せられることもあります。


〈参考〉道路交通法

業界全体として意識の底上げが大切

安全運転管理者は、事業全体の安全性確保に欠かせない存在であり、誰よりも高い意識が求められるでしょう。しかし、事業に係る者は安全運転管理者だけではありません。

 

自動車運転の安全性を高い水準で維持するためには、事業主や労働者(運転者等)、係るすべての者が高い意識を共有していなければなりません。近年では、法律の改正によって車両運転違反に対する厳罰化が進んでいます。無事故、無違反を実現するためには、安全運転管理者を中心とした、全体としての意識の底上げが大切です。

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