2023.05.25

運送業界

運送事業における配車業務とは?現状や課題および改善点について

積荷を目的地へ輸送するために、諸々の決定を下す配車業務。しかし、業務の実情を知っている方は少ないかもしれません。この記事では、運送事業における配車業務の現状や課題、解決策などについて解説します。

目次

配車業務(配車係)とは

運送事業では、請け負った荷物を指定の配送先に輸送しなければなりません。荷物の内容や輸送量、輸送先は業務により異なります。

企業や事業所は、もっとも効率良く輸送を行うことができる方法を選択し、業務を組み立てる必要があります。

配車業務とは、自社が請け負った荷物の配送プランを組み立て、必要な業務を所属ドライバーに割り振っていく仕事です。

配車業務の具体的な役割

配車業務における具体的な仕事内容をまとめました。

①配車スケジュールの策定

配車スケジュールの策定は、配車業務において中心となる作業です。取引先や荷主から依頼された仕事を、所属するドライバーに割り振っていきます。

スケジュールの策定は、積荷の積載量や内容物、目的地までのルート、ドライバーの技量など、あらゆる要素を考慮しなければなりません。

②適切な車両の手配

依頼の内容に合わせ、適任と思われる車両を手配します。ドライバーの技術や労働時間などを比較検討し、効率の良い車両手配を行います。

③ドライバーの管理

輸送中のドライバー管理も、配車業務の一環です。定期的に連絡を取り合い、運行状況や業務の円滑な運営を管理します。

また、運転時間や休憩時間の管理など、労働環境の遵守にも努めなければなりません。

④交通状況の把握

ドライバーの輸送状況は、天候や事故の有無などにより変化します。運行の遅れやトラブルを回避するために最新の交通状況を把握し、ドライバーの輸送業務をフォローします。

⑤他社との連携

繁忙期における輸送量の増加などに伴い、他社ドライバーとの連携が必要になることがあります。他社の配車業務担当者とコミュニケーションを取り、円滑な輸送業務進行を担います。

配車係と運行管理者の違い

運送事業に従事する企業や事業所には、運行管理者が存在します。運行管理者とは、自動車運送事業における安全輸送の責任者です。
 
配車係と運行管理者の業務は似ていますが、両者には明確な違いがあります。

運行管理者は国家資格であり、事業者から選任されたものが業務にあたります。運行管理者の仕事は配車係の業務を監督することですが、配車業務を兼任している事例もあります。

対して、配車業務を行う配車係には、特別な資格は必要ありません。また、運行管理者の業務を行うこともできません。

一見すると、業務の似ているそれぞれの役職ですが、もっとも大きな違いは国家資格の有無です。運行管理者が配車係をこなすことはできますが、配車係に運行管理者業務はこなせないのです。

配車業務の問題点

運送事業にとって重要な配車業務。長時間にわたる運転等を必要としない仕事ですが、業務における負担は決して小さくありません。

配車業務には、特性や労働環境に伴い浮き彫りになっている様々な問題点が存在します。代表的な懸念点は以下の通りです。

業務の複雑さ

配車業務では、様々な条件(配送先、荷物の内容・種類、ドライバーの確保、納期、ルート、労働時間など)を考慮した上で、最適なスケジュールの策定と実行が求められます。

状況は流動的であり、配送係には常に変化する環境に合わせた臨機応変な対応が求められます。これら業務全般の複雑さが、問題視されているのです。

業務の属人化

業務の負担は特定の従業員に偏り、特定個人の労務圧迫を助長します。個別の配車係に依存した体制は、業務の属人化(業務の詳細が共有されておらず、特定の従業員だけが把握している状態)を招きます。

属人化された業務は、円滑な事業運営に大きな支障をきたします。現在の運送事業業界では、業務の複雑さに伴う属人化も大きな問題となっています。

問題点から可視化される課題

業務の複雑さや、属人化が指摘されている配車業務。業界が抱えている課題と展望についてまとめました。

業務の効率化

配送業務の複雑さに伴う労働負担の増加や、アナログ業務の多さ、属人化による引き継ぎ等による弊害の対策として、徹底した効率化が提唱されています。

効率化の対象業務は、デスクワークだけではありません。受注量の変化に伴い発生する積載率の低い車両の存在や、固定ルートの利用による時間のロスなど、輸送面における改善点も存在します。

業務の複雑さを解消するための効率化は、業界の大きな課題です。企業や事業所が徹底した効率化を推奨し、誰でもこなせるような業務運用への移行が求められています。

コストの削減

ドライバーが運転する車両には、車両の維持費や燃料費、高速道路使用費に駐車場費など、多くの輸送費用が発生します。最近では、燃料費の高騰に伴い、輸送コストの上昇が続いています。

また、業界の慢性的な人材不足に起因した、人件費の高騰もコストを圧迫しています。

上昇するコストに対して有効な施策は、無駄なコストを限りなく削ぎ落とすことです。業務の複雑さや属人化が指摘されている中で、人手がなくてもコストを削減できる施策が必要です。

配送業務の具体的な改善策

業務の効率化や、コストの削減に向けた解決策は様々です。以下に、企業や事業所で実際に行われている事例をご紹介します。

ITシステムの導入による配車システムの自動化

運送業界では、輸送配送管理システムの自動化が進んでいます。自動配車システムの代表的なメリットは以下の通りです。
 

  • ● 配車スケジュール(計画)の高速化
  • ● 誰にでも正確な配車スケジュール(計画)の策定 など 

自動管理システムは、複雑な業務の簡略化と属人化の防止に役立ちます。最新のモデルでは、企業や事業所ごとに異なる配車業務の条件を計算し、最善の配車方法を提案できるシステムを搭載した端末も登場しています。
 
自動管理システムを導入することで、業務を円滑に運営することが可能になります。結果的に、業務全体の効率化を実現することができるのです。

業務のアウトソーシング

配車システムの自動化と同様に、物流業務を専門のコンサルタントや第三者企業にアウトソーシング(専門家や専門企業に外注・委託すること)する選択肢も有効です。
 
業務全般を委託する場合や、物流機能の一部を委託する方法まで、特徴や需要に合わせて様々なアウトソーシングスタイルが展開されています。
 
当事者企業に変わり、専門業者にシステム開発や企画、改善点の修正を委託することで、業務全体の効率化を目指すことができます。配送業務の課題が解決されることで、余計な労力やコスト軽減に繋がります。

まとめ

慢性的な人材不足が問題となっている運送業界。配送業務における問題点や課題が、人手不足に起因することは否めないでしょう。しかし、残念ながら、人手不足はすぐに解決できる問題ではありません。

人手が足りない環境であっても、各社の工夫次第で配送業務の効率化やコスト削減は可能です。自社の業態改善を検討する際には、問題点や課題を可視化し、適切な改善方法を選択しましょう。
 

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