2023.09.07

危機管理

交通事故を未然に防ぐためには?運転手や企業が実施すべき対策

交通事故を防ぐためには、未然の対策が重要です。適切なポイントを押さえておけば、発生率を軽減できる交通事故。この記事では、自動車やトラック運転手が知っておきたい事故防止対策や、企業が取り組むべき施策について解説します。

目次

交通事故の発生原因

交通事故を未然に防ぐためには、事故の発生原因を知っておかなければなりません。交通事故の発生原因は様々ですが、法令違反別にみると、具体的な事故原因を知ることができます。
 
令和3年に起きた法令違反別(第1当事者)交通死亡事故は合計2,583件であり、そのうち1,385件が「安全運転義務違反」です。この数字は全体の53,6%を占めており、主な交通事故の発生原因が安全運転義務違反であることを示しています。
 
法令違反別(第1当事者)交通死亡事故発生件数(令和3年)安全運転義務違反の内訳

     内容    件数    割合
 
 
 
安全運転義務違反
1385件(53,6%)
漫然運転 353件 13,7%
運転操作不適 334件 12,9%
脇見運転 257件 9,9%
安全不確認 297件 11,5%
その他 144件 5,6%

安全運転義務違反は、交通事故の発生原因として毎年高い割合を占めています。交通事故の対策には、安全運転義務に関わる意識が必要不可欠です。
 
〈参考〉内閣府 陸上交通 道路交通事故の動向

一般的な交通事故の防止対策

交通事故の原因として、高い割合を占める安全運転義務違反。ただし、原因ごとの防止対策は決して難しいことではありません。安全運転義務違反に関する交通事故対策をまとめました。

安全不確認の防止対策

前方や後方など、自動車の周囲確認を怠ってしまう安全不確認。駐停車中の自動車を発進させる際や、信号機のない交差点などで起こりやすい違反です。
 
安全不確認の防止対策としては、目視による確認が有効です。車内ミラーだけに頼らず、自身の目で安全を確認します。視認しづらい際には、自動車を降りて確認しましょう。信号機のない交差点では、徐行及び一時停止、左右の確認を徹底してください。

脇見運転・動静不注視の防止対策

脇見運転や動静不注視(周囲の自動車や歩行者に気づいていながら注意を怠ること)は、運転に対する集中力低下が原因です。
 
走り慣れた道や低速走行中であっても、集中した運転を意識しましょう。また、周辺車両や歩行者などに対する動向予測は欠かせません。
 
万が一に備え、安全な車間距離の維持、自動車や建物の死角への意識、不意な飛び出しの想定など、周囲の動向に関する意識を途切れさせないよう努めてください。

運転操作不適の防止対策

自動車の操作ミスも、交通事故を引き起こす原因の一つです。自動車を運転する際には、適切な運転姿勢を保ちましょう。
 
過度なリラックス姿勢や、身体のいずれかの箇所に負担がかかる姿勢は厳禁です。背もたれや座席、ハンドルの位置や角度を調整し、自身にあった運転姿勢を維持してください。
 
また、最近では高齢者の運転操作不適が増加しています。加齢に伴う注意力や集中力の低下は、誰にでも起こり得ます。正常な運転操作に不安を感じる場合には、無理な運転を避けましょう。健康上の理由などによって適切な運転が難しい状況では、自主的な免許返納も一つの手段です。

トラック運転手特有の交通事故リスク

交通事故のリスクが高い業界には、貨物運送事業を挙げることができます。中でも、大型車両を長時間運転しなければならないトラック運転者には、他業界にはない特有のリスクが存在します。

健康に起因するリスク

貨物運送事業に従事するトラック運転手は、不規則な生活習慣や長時間に及ぶ自動車の運転など、心身共に疲労が蓄積しやすい労働環境に身を置いています。
 
現在では、以前に比べて労働環境の是正が進んでいます。ただし、不規則な生活習慣や、度重なる重労働が安全運転義務違反の原因となる可能性は否定できません。

荷物に起因するリスク

貨物運送事業に使用されるトラックでは、多くの荷物を運搬することも珍しくありません。荷台の荷物は荷崩れのリスクを孕んでおり、荷崩れによる振動や衝撃は、重大な交通事故に繋がる可能性を秘めています。

トラック運転手の交通事故防止対策

上述した交通事故リスクを回避するためには、トラック運転手自身の自主的な防止対策行動が必要です。

徹底した健康管理と健康増進

健康に起因した交通事故は、運転手の生活習慣や勤務環境が原因となって引き起こされます。健康管理・増進の取り組みとしては、栄養・食生活・運動・休養・飲酒・喫煙などに関する管理と改善が重要です。
 
運転者自身が平時から上述の内容を意識・促進しましょう。健康状態の確認のためには、専用の機器やスマートフォン用アプリなどを利用する方法も有効です。また、日常生活を共にしている家族から支援や、助言を受けることも効果的でしょう。

荷崩れ防止方法の実行

荷物に起因する交通事故は、積荷の管理を工夫することで対応しましょう。過積載や偏荷重を避け、荷物の形状や最大積載量を遵守した積付を心がけます。
 
荷物を運搬する際の運転は、急ブレーキ・急発進・急旋回などの操作に気を配り、遠心力などの影響を受けやすいカーブなどの運転は特別慎重に操作します。適切な対策と運転を実行できれば、荷物に起因する交通事故の大部分は防止可能です。

企業が実施すべき交通事故への取り組み

事業における交通事故防止対策は、組織としての取り組みも重要です。企業として実践できる、代表的な交通事故対策事例をご紹介します。

安全運転管理者や運行管理者の選任

法律に基づいて自動車の安全管理を担う者を指します。日本の法律では、特定の条件に当てはまる事業所(会社やお店等)は、安全運転管理者及び運行管理者を選任しなければなりません。
 
安全運転管理者及び運行管理者は、自動車の安全管理や従業員や運転手の安全運転教育を行います。交通事故に対する施策や、防止対策も業務の範疇です。
 
安全運転管理者及び運行管理者の選任義務がある事業所にとって、然るべき人材の確保は、交通事故防止への取り組みとしても最優先事項です。

交通事故防止ガイドラインやヒヤリマップの策定

企業に所属する従業員が業務で自動車を使用する際には、規則を定めたガイドラインを策定しましょう。
 
ガイドラインには、運転モラル(道路交通法の遵守、事故防止の観点から意識する運転姿勢づくりなど)に関する基準や、業務で自動車を使用する際の規定を明記します。
 
交通ヒヤリマップも効果的です。業務で使用する地域や道路など、自動車を使用する際に交通事故のリスクが高い箇所を選定し、同時の交通事故防止マップを作成します。
 
ガイドラインやヒヤリマップの策定は、企業全体の交通事故に対する安全対策の意識向上を見込めるでしょう。

安全運転管理サービスの導入

現在では、交通事故防止のための安全管理サービスが豊富に展開されています。GPS搭載の車載器であれば、運転者の位置や運転内容の詳細を記録・保存できます。
 
また、速度超過や一時不停止の検知など、道交法遵守を促す事故抑制のシステムを導入しているサービスなども提供されています。業務で自動車を使用する企業にとって、交通事故防止に有効な選択肢でしょう。

まとめ

交通事故を未然に防ぐためには、運転手本人と所属する企業双方における高い安全運転意識が重要です。交通事故の原因やリスクを正しく認識し、然るべき防止策を実行してください。

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