2024.03.31

飲酒対策

飲酒運転は同乗者も罪に問われる?状況に応じた刑罰の種類について

飲酒運転の罰則対象は、車両の運転者だけではありません。状況に応じて、飲酒運転車両の同乗者も罪に問われる可能性があります。当事者だけに留まらない飲酒運転の厳罰化。
この記事では、主に飲酒運転の同乗者に関わる刑罰の範囲や、内容について解説します。

目次

飲酒運転は酒気帯び運転?

一般的に耳にする「飲酒運転」とは、車両の運転中に法律で定められた基準以上のアルコール濃度が検出された(吐き出す息から)状態や、明らかに酔っていることが明白な状態を指します。
 
飲酒運転は、飲酒当事者の状態によって「酒気帯び運転」と「酒酔い運転者」の2種類に区別されています。ただし、上述の区別は法律的な定義であり、広い範囲の意味においては、どちらも飲酒運転であることに変わりありません。

 
          「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の定義
酒気帯び運転 呼気(体内から吐き出す息)1リットル中からアルコール濃度0.15mg以上が検出された状態
酒酔い運転 真っ直ぐに歩けない、質疑応答に違和感があるなど、客観的に酔っている状態
 

〈参考〉飲酒運転の罰則等

飲酒運転車両の同乗者に対する罰則

現在の法律では、飲酒運転を行った当事者だけでなく、車両の「同乗者」にも罰則(飲酒運転同乗罪)が課せられます。
 
ただし、旅客運送事業用の乗り物(公共のバスやタクシーなど)に同乗した場合には、処罰の対象となりません。同乗者に対する罰則は、刑事処分と行政処分に分けられます。

 
      飲酒運転車両への同乗禁止(道路交通法第65条第4項)の刑事処分
        内容         罰則
運転者が酩酊状態であることを知りながら、酒酔い運転の車両に同乗した場合 三年以下の懲役または五十万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転であることを知りながら、該当車両に同乗した場合 二年以下の懲役または三十万円以下の罰金
 
 
 
      飲酒運転車両への同乗禁止(道路交通法第65条第4項)の行政処分
        内容         罰則
運転者が酒気帯び運転をした場合
(呼気1リットルにつき、0.5mg以上0.25mg未満)
違反点数13点
免許停止90日間
運転者が酒気帯び運転をした場合
(呼気1リットルにつき、0.25mg以上)
違反点数25点
免許取り消し
欠格期間(再取得禁止)2年
運転者が酒酔い運転をした場合 違反点数35点
免許取り消し
欠格期間(再取得禁止)3年
 

車両や酒類の提供者に対する罰則

飲酒運転同乗罪の対象範囲は、同乗者以外にも及びます。具体的には、飲酒当事者に車両を提供した者や、酒類を提供した者も罰則の対象となります。

 
    飲酒者に対する車両等の提供禁止(道路交通法第65条第2項)の罰則
        内容         罰則
運転者が酒酔い運転をした場合の車両提供者に対する罰則 五年以下の懲役または百万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転をした場合の車両提供者に対する罰則 三年以下の懲役または五十万円以下の罰金
 
 
    運転者に対する酒類の提供禁止(道路交通法第65条第3項)の罰則
        内容         罰則
運転者が酒酔い運転をした場合の酒類提供者に対する罰則 三年以下の懲役または五十万円以下の罰金
運転者が酒気帯び運転をした場合の酒類提供者に対する罰則 二年以下の懲役または三十万円以下の罰金

飲酒運転周辺者と判断される基準

飲酒運転車両の同乗者や車両・酒類提供者は、飲酒運転周辺者と定義されています。当事者以外の周辺者は、以下の基準を満たした場合に飲酒運転同乗罪に問われます。

①飲酒の事実を知っていること

車両運転当事者の飲酒事実を、明確に認識していた場合です。実際に飲酒する姿を目にしていなくても、飲酒場所(飲み会や飲食店など)に同席していた場合や、車両運転当事者が明らかに酩酊していることが明らかな場合などであれば、「認識があった」と認定されます。

②同乗の要求や依頼があったこと

飲酒運転周辺者自身が、飲酒している運転者に対して同乗を要求・依頼する行為が認められた場合です。ただし、どれだけ働きかけが認められた場合でも、実際に同乗していなければなにも問題はありません。

同乗者が飲酒運転を知らなかった場合

運転者の飲酒事実を認識していた同乗者は、上述の罪に問われます。ただし、飲酒している運転者の車両に同乗しても、飲酒事実を知らなかった場合には罪に問われません。
 
家族や友人に、車両で迎えに来てもらった場合を想定してみましょう。車両の運転者が飲酒をしていても、その事実に気がつかず同乗した場合には、飲酒運転同乗罪に該当しません。
 
ただし、知らなかったと主張しても、同乗者に運転者の飲酒を認識できる客観的根拠(運転者の様子から飲酒の事実が確認できる場合など)が見つかった際には、罪に問われる可能性があります。

飲酒運転周辺者が罰則を受けた事例

飲酒運転周辺者に対する罰則は、平成19年の道路交通法改正によって新設されています。法改正後の平成20年には、酒類の提供について国内初の有罪判決が言い渡されています。

事件の概要

飲食店を経営する被告人は、同店の客であるXに対して、飲酒運転の危険性があることを知りながら酒類を提供した。Xはアルコールの影響により正常な運転ができない恐れがある状態で普通常用自動車を運転した。Xは制限速度を遥かに超えるスピードで車両を運転し、対向車線を運転していた車両2台に衝突した。死傷者が多数出る大惨事となった。

判決

飲酒運転周辺者である Xに対し、懲役2年執行猶予5年の求刑
 
〈参考〉レファレンス 協同データベース

まとめ

飲酒運転の罰則対象は、車両運転者だけには留まりません。現在では、車両同乗者および、車両・酒類提供者も罰則の対象となります。
 
飲酒運転の厳罰化が進む昨今、自分自身が飲酒運転当事者ではなくても、飲酒運転周辺者として刑罰の対象になる可能性は十分に考えられます。飲酒の際は飲酒運転当事者にならないことはもちろん、飲酒運転周辺者に対する意識も忘れてはなりません。

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