2021.12.02

危機管理

自動車運送事業における「IT点呼」とは? 概要や導入方法を解説

目次

自動車運送事業者により選任された責任者(運転管理者)が行う点呼は、安全かつ円滑な運行を確保するために重要な責務です。そんな現在、特定の条件を満たす事で導入できる「IT点呼」が注目されています。

 

ここでは、IT点呼を検討している自動車運送事業関係者の方へ向け、導入方法や規定の詳細を解説します。

IT点呼実施の経緯

日本では特定の法律(貨物自動車運送事業法、貨物自動車運送事業輸送安全規則、旅客自動車運送事業運輸規則)によってトラックやバス、タクシーを用いた貨物及び旅客運送事業における点呼の実施が義務付けられています。

 

運転者の業務内容や体調、酒気帯びの有無を確認する点呼は「業務前点呼」「業務途中点呼」「業務後点呼」が実施され、やむを得ない事情がない限り原則として対面で実施される旨(対面点呼)が定められています。諸事情によって対面点呼が困難な場合には、電話を使用した遠隔点呼(電話点呼)が用いられてきました。

 

しかし、IT技術の進化や働き方改革など多角的な観点からより効率的な遠隔点呼のあり方が模索され、特定の機器やシステムを用いたIT点呼の需要が求められるようになりました。

 

国土交通省は2000年代の終わりから段階的にIT点呼を実施し、段階的に必要条件を緩和する事で制度を拡大してきました。現在では多くの自動車運送事業業界でも取り入れる事が可能です。

IT点呼の概要

国土交通省が定める点呼方法の一つです。点呼実施者と運転者が対面する対面点呼とは異なり、お互いが対面せずに離れた場所から点呼を行う遠隔点呼に分類されます。点呼にはIT点呼特有のwebシステムが用いられ、対面に近い環境下で点呼を行う事ができます。

IT点呼の主なシステム

現在では多くの製造業者からIT点呼管理システムが開発・販売されています。以下にIT点呼システムを用いて可能になる代表的な機能をご紹介します。(※個別の機能や操作方法は管理システムごとに異なります)

 

点呼機能

パソコンやスマートフォンのモニターを利用し、テレビ電話のように相手の顔を確認しながらの点呼が可能。内蔵カメラが搭載されていない端末では、外付けのカメラと連動させる。

 

各種チェック機能

呼気のアルコール濃度や血圧測定などの健康点検および免許証の確認など、業務を遂行するにあたって必要な各所確認事項の検査が可能。

 

データの保存・出力機能

運転者の個人情報や点呼記録、その他業務に関わる様々な情報を保存及び出力する事ができる。

IT点呼導入のメリット

IT点呼が普及しはじめた背景には従来の点呼方法にはなかったメリットの存在があります。代表的なメリットを挙げました。

 

人件費の削減

点呼は運行管理者が行う必要がありますが、点呼現場は運転者が所属する営業所であり、各拠点ごとに運行管理者が必要でした。IT点呼では代表の運行管理者を配置することで一括点呼を行う事が可能となり、人件費を大幅に削減する事ができます。

労働者の業務負担軽減

自動車運送事業は、業務の性質上早朝や深夜の勤務が多く対面点呼の物理的負担は決して軽いものとはいえません。IT点呼では対面点呼に比べ少ない人員で業務を遂行でき、作業も簡略化できることから労働者の負担軽減に繋がります。

点呼の確実性向上

IT点呼では従来手作業で行っていた作業の大部分を自動化することが可能です。記入漏れや帳簿の紛失など手作業で起こりやすいトラブルを回避することができ、点呼の質が向上します。

データ管理の効率化

手作業による点呼では帳簿や記録簿を物理的に保管しておく必要がありますが、IT点呼ではすべてのデータをクラウド上(インターネットの中)に保存可能です。(クラウド型ではないIT点呼システムも存在する)データのアクセスも容易になり利便性が向上します。

IT点呼導入に必要な条件

国土交通省はIT点呼の利用条件を「輸送の安全及び旅客の利便の確保について優良と認められる自動車運送事業者の営業所」と定めており、優良と認められるためには以下に記す2つの条件の内どちらかを満たす必要があります。

【条件①】Gマークを取得する

国土交通省が自動車運送事業の事業所に対して設けている認定制度です。利用者に対し安全性が担保されている事業者を選択しやすくするなどの目的で設定され、予め設定されている特定の評価項目の合格基準を満たすことで安全性優良事業所として認定されます。

 

認定された事業所には安全性の証である「Gマーク」と共に様々なインセンティブが付与されます。IT点呼の導入許可は優良事業所として認定されたインセンティブの一つです。

【条件②】特定の要件を満たす

Gマーク取得はIT点呼導入の必須条件ではありません。Gマークがなくても所定の条件を満たすことでIT点呼を導入することができます。

 

【Gマークを取得していない場合のIT点呼導入条件】

 

  • ・運輸開始後3年を経過している
  • ・過去3年間、第1当事者となる自動車事故報告規則に掲げる事故を引き起こしていない
  • ・過去3年間、点呼の実施違反に関連する行政処分がない
  • ・適正化実施機関の直近の巡回指導評価が規定の水準以上である

 

Gマークの取得方法

Gマークを取得するためには以下の方法で申請手続きを行い、然るべき審査を受ける必要があります。

 

〈Gマーク申請の流れ〉

1.国が指定した機関である全日本トラック協会の各都道府県窓口に申請書を提出する。

 

2.安全性評価委員会が評価基準に基づき審査

 

3.数ヶ月後に全国トラック協会のホームページに審査結果が掲載

 

〈具体的な評価項目と認定要件〉

 

・項目

①安全性に対する法令の遵守状況

配点40点(基準点数32点)

・地方実施機関の巡回指導結果

・運輸安全マネジメント取組状況

②事故や違反の状況

配点40点(基準点数21点)

・重大事故・行政処分の状況

③安全性に対する取組の積極性

配点20点(基準点数12点)

・安全対策会議の実施、運転者の教育などの取組の自己申告事項


・認定要件

1)上記①~③の評価点数の合計点が80点以上

2)上記①~③の各評価項目において上記の基準点数以上

3)法に基づく認可申請、届出、報告事項が適正になされていること

4)社会保険等の加入が適正になされていること

 

〈参考〉

国土交通省 Gマーク制度

IT点呼の導入手順

IT点呼導入のための具体的手順を解説します。

 

①必要な事前条件(上述)を満たす。

 

②国土交通省の公式HPから使用が許可されている機器を確認する。

(IT点呼導入には国土交通省が定めた機器を使用する必要がある)

 

③導入機器を製造するメーカーから機器を購入し設置する。

 

④導入営業所を管轄する運輸支局へIT点呼導入を伝える申請書を提出する。

(原則として申請書の提出はIT点呼実施の10日前までに行う)

 

⑤実施に向けた操作方法や手順の確認を行う。

補助金制度

国土交通省は事故防止対策支援推進事業の一貫として、IT点呼導入に伴い発生する機器購入経費を補助する制度を設けています。所定の条件を満たすことで経費の半分、最大80万円までの補助を受けることが可能です。IT点呼導入を検討する際には活用すると良いでしょう。

 

 

〈参考〉

関東運輸局 東京運輸支局

 

国土交通省 事故防止対策支援推進事業

 

IT点呼は従来の点呼方法に比べ多くのメリットを備えた点呼方法です。導入のためには初期投資が必要になりますが、補助金制度を活用することで経費を削減することも可能です。

安全性や生産性向上の観点からも、IT点呼導入は自動車運送事業における有用な選択肢の一つです。

弊社ではIT点呼対応機器として「ソシアック・ネオ※1」、「ネオ・ブルー※2」を製造・販売しております。
Bluetoothを搭載することでシステムをインストールしたスマートフォン・PCと通信を行い、遠隔地・拠点間でのIT点呼が可能となっております。
※1:テレニシ社製「IT点呼キーパー」、インフォセンス社製「デジタル点呼マネージャー」、中央自動車工業社製「ソシアック・ネオPC管理ソフト」いずれかと併せての導入が必要
※2:テレニシ社製「IT点呼キーパー」、インフォセンス社製「デジタル点呼マネージャー」いずれかと併せての導入が必要

参考:アルコール検知器 ソシアック「SOCIAC NEO」製品詳細

参考:アルコール検知器 ソシアック「NEO BLUE」製品詳細
 

 

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