2025.04.30
運送業界
【運行管理者】制度の内容、運行管理者になる方法について解説

運行管理者は、バスやトラック、タクシーなどの事業用自動車の安全運行を確保するために道路運送法等に基づいて国が定める資格です。運行計画の作成や乗務員の指導、点呼の実施など、安全管理の要となる役割を担います。
今回の記事では、運行管理者の資格取得方法や業務内容、選任の基準について詳しく解説します。適切な運行管理を行うことで、事故の防止や業務の効率化につながります。事業者やドライバーの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
運行管理者とは?
運行管理者とは、貨物自動車やバスやトラック、タクシーなどの事業用車両の安全運行を管理する責任者であり、道路運送法および貨物自動車運送事業法に基づいて、事業所車両の運行に必要な各種管理業務を行います。
主な業務は以下のとおりです。
- ・点呼の実施によるドライバーの健康状態や疲労の確認
- ・運行計画や乗務割の作成
- ・休憩・睡眠施設の保守管理
- ・運転者の指導監督
- ・安全運行のための指示
国土交通省のホームページでは、運行管理者について次のような説明があります。
運行管理者は、道路運送法及び貨物自動車運送事業法に基づき、事業用自動車の運転者の乗務割の作成、休憩・睡眠施設の保守管理、運転者の指導監督、点呼による運転者の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示等、事業用自動車の運行の安全を確保するための業務を行います。 引用:自動車運送事業の運行管理者になるには - 国土交通省 |
運行管理者はドライバーの健康状態を把握して、安全な運行を実現するための指導を行います。
運行管理者の必要性|運行管理者制度について
自動車運送事業者(貨物軽自動車運送事業者を除く)は、一定数以上の事業用自動車を有している営業所ごとに、一定の人数以上の運行管理者を選任する必要があります。
1つの営業所に複数の運行管理者がいる場合は、その中から統括運行管理者を選任します。運行管理者として選任されるためには、所定の資格を取得し、営業所での正式な選任・届け出手続きが必要です。
運行管理者の業務内容

運行管理者の業務は、ドライバーの健康状態を把握したり、乗務記録を管理したりすることです。ドライバーが安全な運転を心掛けて業務できるよう、運行管理者は様々な管理や指導を行います。運行管理者の主な業務内容は、次の通りです。
- ・ドライバーの乗務割の作成
- ・乗務記録の管理
- ・休憩や睡眠施設の保守管理
- ・ドライバーの指導監督
- ・ドライバーの疲労や健康状態等の把握
運行管理者には、人や車両の動きを把握して安全を確保する高度な判断力、運転者に適切な指示を行う優れた指導力が必要です。
運行管理者の配置人数と届出
貨物自動車運送事業者、旅客自動車運送事業者ともに、営業所ごとに運行管理者を必ず1人配置することが、道路運送法により定められています。
こちらでは、運行管理者の配置人数と届出について解説していきます。
運行管理者の配置人数
運行管理者の配置人数は、法令により決まっており、貨物自動車運送事業者(トラック)と旅客自動車運送事業者(バス、タクシー)で若干異なります。
【貨物自動車運送事業者(トラック)】
- ・保有車両29両まで1名、以降30両ごとに1名追加
【旅客自動車運送事業者(バス、タクシー)】
- ・貸切:保有車両29両まで1名、以降30両ごとに1名追加
- ・乗合、乗用:保有車両39両まで1名、以降40両ごとに1名追加
出典:運行管理制度について|国土交通省
運行管理者の届出
運行管理者を選任または解任した場合、運行管理者の届出が必要です。道路運送法施行規則第42条に基づき、旅客事業者は15日以内に、貨物事業者は1週間以内に届出をしてください。
選任届出の際は、運行管理者選任・解任届出書と、運行管理者資格者証の写しを合わせて提出する必要があります。
詳しくは、営業所の管轄の運輸支局にお問い合わせください。
参考:整備管理者の選任届出等の書式 - 関東運輸局
【資格】運行管理者になるには国家試験に合格するか5年以上の実務経験が必要
運行管理者は、誰でもすぐになれるわけではありません。運行管理者の資格取得は、道路運送法により定められています。
運行管理者になるには、5年以上の実務経験を積むか、運行管理者試験に合格することです。
【貨物自動車運送事業者(トラック)】
- ・5年以上の実務経験に加えて、基礎講習を含む所定の講習を5回以上受講する必要があります
- ・運行管理者試験に合格する
【旅客自動車運送事業者(バス、タクシー)】
- ・5年以上の実務経験を積み、 所定の講習を5回以上受講する
- ・運行管理者試験に合格する
- 受験資格として1年以上の実務経験、または基礎講習受講が必要
出典:運行管理制度について|国土交通省
出典:運行管理者について|国土交通省(自動車総合安全情報)
運行管理者試験に合格する
運行管理者試験に合格することで、「運行管理者資格者証」の交付を受けることができます。試験の種類は「旅客」と「貨物」の2種類があります。試験科目は、次の通りです。
- ・道路運送法
- ・貨物自動車運送事業法
- ・道路運送車両法
- ・労働基準法などの法令等
- ・運行管理者の業務に関し必要な実務上の知識及び能力
出典:自動車運送事業の運行管理者になるには - 国土交通省
5年以上の実務経験があり、基礎講習や一般講習を修了している
運行管理者試験を受けなくても、5年以上の実務経験があり、なおかつ所定の講習を5回以上受講していれば運行管理者になれます。
運行管理者の講習は基礎講習、一般講習、特別講習があり、運行管理者になるには基礎講習を5回以上受講しなければいけません。
出典:運行管理制度について|国土交通省
出典:運行管理者について|国土交通省(自動車総合安全情報)
運行管理者になった後も、一般講習を2年に1度受けなければいけません。これは新しい法令や基礎知識を学び、業務に必要な情報を定期的にアップデートすることが目的です。
特別講習とは、運行管理者が事故を起こすなどして、法令違反により処分を受けたときの講習です。違反などによる処分を受けた場合は、発生日から1年以内に特別講習を受けなければいけません。
まとめ
運行管理者は国家資格であり、バスやトラック、タクシーなどの自動車運送事業者の場合は、必ず選任しなければいけません。
運行管理者になるには、運行管理者試験に合格するか、5年以上の実務経験+基礎講習と一般講習を修了するかのどちらかです。
事業者やドライバーの方は、今回紹介した内容をぜひ参考にしてください。