2023.08.08

運送業界

社用車を通勤や私用に使いたい!注意点やメリット・デメリットを解説

企業が業務に使用する社用車。使用に関する法的規制はなく、需要は増加しています。便利な社用車ですが、業務以外で使用する際にはリスクも存在します。
 
この記事では、社用車を通勤に使用する際に知っておきたい注意点や、使用のポイントを解説します。

目次

社用車の定義

法人や個人事業主が所有・管理している車両であり、主に業務や関連する移動に使用します。ただし、社用車=会社の所有車とは限りません。社用車の中には、リース車やレンタカーも含まれています。

社用車の通勤および私的(プライベート)使用について

社用車の使用について、具体的な制限はありません。法律による明確な規定や規則はなく、社用車を管理する企業の判断に準じます。
 
社用車の私的使用範囲には、様々なケースが考えられます。一例として、業務中の寄り道(空き時間における私的使用など)や、休日使用(個人的な用事における使用など)を挙げることができるでしょう。

社用車を通勤に使用する際のメリット

社用車の通勤使用には、企業・社員双方にメリットがあります。

経費として計上できる

法人名義で購入した社用車に関する費用は、経費計上可能です。社員が通勤に社用車を運転した際、生じたガソリン代は経費の範疇です。
 
使用に関わる一連の費用(自動車税・保険料・駐車場代金・修理費用・車検費用など)も、経費計上可能です。これらの費用を必要経費として計上することで、節税対策に繋がります。

減価償却が可能

減価償却とは、車両の購入費用を、耐用年数に合わせて分割費用計上する会計処理です。車両の購入費用を数年に渡って経費として計上できるため、こちらも節税対策として効果的です。

移動負担の軽減

社用車を使用する社員にとって、職場や取引先、作業現場などに直行直帰できる通勤手段の確保は大きなメリットです。物理的な移動負担の軽減は、業務の効率化にも繋がります。

社用車を通勤に使用する際のデメリット

社用車の通勤利用には、メリットのある一方でデメリットも存在します。

事故や盗難のリスク

代表的なデメリットには、社用車運転時の事故や車両の盗難が挙げられます。社用車は自家用車に比べて運転頻度が低く、慣れない車両の運転は事故のリスクを高めます。
 
また、盗難の危険性にも留意が必要です。通勤に使用する社用車の管理は、多くの場合、社員に委ねられることが多いです。
 
多くの場合、自宅の敷地内や契約中の駐車場などを利用することになるでしょう。セキュリティが整った企業の敷地に比べ、盗難のリスクが高まります。

交通事故による法的責任の発生

社用車の運転中に交通事故を起こした場合には、加害者本人だけでなく会社(※詳細は後述)にも法的責任が及びます。交通事故の内容にもよりますが、然るべき罰則を負わなければなりません。

社用車の通勤使用には正確な車両管理規程を

車両管理規程とは、社員が業務で車両を使用する際のルールを明記した規定です。社用車の使用有無や範囲は、車両管理規程に準じます。企業は自社の業務内容に沿って、車両の運用ルールを定めなければなりません。

車両管理規程の意義

車両管理規程の制定は、主に以下の内容を目的としています。
 

  • 社用車による業務活動を円滑かつ効率的に行うこと
  • 道路交通法を遵守し、事故や違反を抑止すること 

社用車の使用に関しては、法的な基準がありません。だからこそ各企業の車両管理規程が重要になります。所属社員は、企業の車両管理規程に従って業務を行います。事故や盗難などのトラブルを回避するためには、正しい車両管理規程の策定が欠かせません。
 
なお、労働基準法では、常時10名以上の労働者を使用する使用者に就業規則の策定・届出を義務づけています。自社の業務内容にあった基準を策定し、具体的な内容を明記しましょう。

具体的な基準や項目例

車両管理規程を策定する際には、社用車の使用条件など、具体的な基準を明確に定義しておく必要があります。車両管理規程に明記したい内容例は、以下の通りです。
 

  • 通勤ルート(通勤に使用するルートに関する内容)
  • 運転記録の提出と保管(走行距離や給油の有無など、運転に関する記録に関する内容。ドライブレコーダーなどを使用して管理する場合は、データの提出や保管について明記)
  • 社用車の使用権限(社用車の使用権限に関する内容)
  • 私的使用の有無と利用可能範囲(通勤以外での社用車使用の範囲に関する内容)
  • 事故や盗難など、有事の際の対処方法(有事の際の対処や責任に関する内容)など

車両管理規程を策定する上で注意すべきポイント

企業が車両管理規程を策定する際には、注意しなければならないポイントがあります。以下の内容を具体的かつ厳密に定義しておくことで、有事の際のリスクに対応しやすくなるでしょう。

法的責任の範囲について

社用車を使用した社員が交通事故などを起こした場合、加害者本人には相応の法的責任が課せられます。しかし、会社にも連帯責任が課せられる事例があります。
 
会社が果たさなければならない法的責任は、民法715条「使用者責任」と自動車損害賠償保障法3条「運行供用者責任」の2つです。
 

  • 民法715条「使用者責任」
    • 社員が他人に損害を発生させた場合、社員が所属する会社も被害者に対して損害賠償責任を負わなければならない
  • 自動車損害賠償保障法3条「運行供用者責任」
    • 自動車の運行によって利益を得ることができる立場にある者は、その運行によって損害を発生させた場合、生じた損害に対して賠償責任を負わなければならない 

これらの法律は、社用車を提供している会社の法的責任を認めるものです。業務時間内であればもちろん、業務時間外(通勤や私的使用時など)であっても、社用車であれば会社には相応の責任が生じます。
 
ただし、社員が車両管理規程に違反していた場合(無断の私的使用など)には、その限りではありません。
 
法的責任の範囲は、車両管理規程の内容や事故の経緯なども考慮されます。交通事故には様々な事例が考えられ、責任の所在も一律ではありません。業務において社用車を使用する際には、起こり得る交通事故を想定し、車両管理規程の内容を明確にしておかねばなりません。
 
〈参考〉民法

交通費について

業務中や通勤時の使用であれば、必要なガソリン代などを通勤交通費という名目で支払う必要があるでしょう。ただし、私的使用を許可している場合、業務と私的使用の範囲を区別することは難しいといわざるを得ません。
 
そのような場合には、あらかじめ車両管理規程に具体的な金額や距離の範囲など、会社が負担する費用の上限を明記しておくことが重要です。

所得税の所在について

一般的な通勤手当は、一定の限度額内であれば非課税(所得税が免除)です。ただし、一定の限度額以下が非課税と認められるためには、通勤者自身の所有車両(マイカーや自転車など)の使用が条件となります。
 
社用車を貸し出している社員に通勤手当を支給する場合には、その全額を給与として課税しなければならず、非課税枠を使用することはできません。

まとめ

社用車を使用する際には、知っておかなければならない注意点やポイントが存在します。上手に利用することで業務の効率化に繋がる社用車。使用の際には、正しい知識を身につけておきましょう。
 

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